2009年6月29日月曜日

1X08A071 清水 岳 A+++     







「既存のフォルム」
アルミの鏡面の三種の仕上げ面の立体構成によって、表示されている像imageの発見の地平に、既存から超越する「創造」の何がしかの残滓を見出している作品。作品というレベルにまで高められた体裁が、逆に「既存のフォルム」への作者の真摯な姿勢を浮かび上がらせる。(入江)

1X08A010 石田 雄一郎 A++    







「からだ/美」
節骨隆々たる男性の腕が、鉛筆画によって克明に描写されている。この眼を釘づけにする描写に対応するものは、便所で見られる男女の記号的図象であり、色彩を脱色された腕のそれである。後者が男性の社会的「sign」であり、前者はRealな「image」である。この両端に対比・対立する方向の中で、「既存」というシステムが成立し、眼に見えるようにされている。(入江)

1X08A110 中村 猛  A++   







「目に写るモノ」
目に写るものというテーマで、版画にしてきており、版画に対する過程で取捨選択される図像の構成、および、版画によって出てくるテクスチャーがとても生き生きとしている。このような過程に耐えうるようにフォルムを捉え直すとうい作業がなされていて好感が持てる。(箕原)

1X08A007 Iida TAK A++    







「不既存なものの連続から」
素材には色、質感は必ずついてまわってくるものである。しかし素材を使用する目的によって、規定の見方が浮かび上がってくる。紙、木、金属とさまざまな素材を変える事によって既存の見方があらわれてくる。金属の表現が手が込んで歪みが生じている。既存のフォルムを超えようとしている部分であろう。(日置)

1X08A006 荒井 唯香 A++







「既存の言葉たち」
ミヒャエル・エンデ作「モモ」の第10章のはげしい追跡とのんびり逃亡の一説が丁寧に引き写されている。「既存の言葉たち」による物語が、エンジの羅紗紙とトレペの重ねでできた引き延ばされた面に展開されている。トレペの端部は焦げつきくずされているが、ピンクの紐が読みかけの位置をしるしている。改めての紙面に引き写された「言葉たち」が、それらの既存のフォルムを浮き彫りにするかのようだ。(入江)

1X08A096 田中 一仁 A++    







「仕舞う」
既存のフォルムとフォルムのせめぎあいの場としての本棚。本来、本は縦にしまわれるべきとのルールがあるはずだが、収納容量を考えるときそれはすぐに逸脱される。日常生活の中で、これほどフォルムがせめぎあう場はないのではないか?(池村)

1X08A002 AONUMA KATSUMA A++







「百科事典棒」
村上春樹の小説の一説の引用。どんな文字情報も数字に置き換える事ができ、それを記録することは何も特別なものを用いなくとも既存の楊枝の棒で十分だという話。たしかに原理的にはそうかもしれない。実際コンピューターの中にはあらゆる情報が詰まっている。だが本当に可能なのか?アキレスとカメのパラドックスのようなよくわからない話ではある。(池村)

1X08A039 川上 絢子 A++    







「時刻の消失で見えるもの」
すべてのFormの中には常に光が介在している。私達は知らず知らず太陽の光と量によって時間を無意識に感じている。時間を消失させるために、ドットによる風景を描いている。廻りに描かれている数字は、少々わずらわしく感じる。時間=時計という構図はあまりいいとは思わない。(日置)

1X08A064 SADO MASAYUKI A++







「MY VOMITUS」
標識や看板、ビラ等普段見慣れたものの写真によってすべてが構成されている。写真という既存のものそのものの照明であるかのようなものの寄せ集め。明らかに絵となるものを創り出していて面白い味が出ている。(箕原)

1X08A162 もりもと りょう A++ 







「そして小さな日常が繰り返される」
文字を扱った作品が作品がいくつもある中で、これは一枚に一つの文字だけをレイアウトし、文字の一部分を欠落させてきている。そのことによって、見慣れた文字の形を、改めてよく見えるように仕向けられていて面白い。(箕原)

1X08A035 Ken Kazama A++   







「This is A…」
本来、建物とは屋根と壁からなるフォルムを持つべきであるとそう考える人がいるのかもしれない。描かれているような集合住宅はそのようなフォルムを持たない。フォルムのないフォルム。その中で人間の全ての営みが行われる。(池村)

1X08A101 田淵 奈央 A++   







「道化師の遊び」
不気味な笑いを含んだピエロが人を操っている。ピエロと人間をモチーフにしてアイロニカルにとらえている点はおもしろい。見る角度によって人間の思い込みを逆転させるような表現はおもしろいが今いち効果が出ていないのが残念。ピエロの不気味さが良い。(金谷)

1X08A059 斎藤 愼一 A++    








「家型」
家型は私達の家のイメージであるかもしれない。それを三角と四角に分解して再構築している。2つのフォルムだけで展開して作品の単純さを出そうとしているが少し短絡的である。グラフィック的にまとめあげすぎたのではないだろうか?(日置)

第五課題 「既存のフォルム」

日常という。日々が常であるということである。常とは、変わらぬこと、前からそうなるようになされていること、それから普段、平常ということを意味する。人々の普段の生活では、私たちはそのような日常の、既存の様態の中にあり、その中に組み込まれており、あるいは逸脱しようとしている。日常を既存、既在に置き換えてみるとき、私たちは既に存ずるもの、こと、既に在ること、もの、出来上がっているコンセプトの中で生きられている。自分の考え方といっても、それさえも既存、既在、あるいは内からではなく、外から作られてしまっていないか。
 その様態を自覚的にとらえるとき、一体既存のフォルムとは何だろう。それをあらわにする方法や道具の提案も含めて、そのフォルムを描き出して下さい。

提出物:規定用紙275×275 表紙+2枚以上
表現:自由

出題日:5月20日
提出日:5月27日
公表日:6月3日

2009年6月5日金曜日

1X08A071 清水 岳 A+++






「神は笑って見ていました」
最初は一重の城壁に囲まれた街が、籠城が続くにつれて、著しく高さを増し、ついには独特の形状を持つ塔状としにまで増築してしまっている。人間のあくなく建築への欲求とその営みのおろかさを描いている。ブリューゲルのバベルの塔のよう。(池村)